PRを考える 山根英夫監修 小倉重雄著 電通 電通選書の一冊。「パブリック」の起源から、欧米と日本のPRの発展を歴史的観点からまとめた、カバーデザインからは想像できない硬派の内容で、広報の理念を勉強するには好適だ。広報を専攻する学生の参考にもなるだろう。初版はロッキード事件の起きた年。胡散臭い広報屋が暗躍していた時代から、企業の社会的責任が問われ、近代的な広報の時代へと大きく変化しようとした時代背景をこの本から感じることができる。 | |
レピュテーションマネジメント R.J.オルソップ 他著 日本実業出版社 米国では以前から雑誌などで企業の評判に関するランキングなどが発表されていたが、エンロン事件の後はさらに企業に対する社会の評判が重要であるとの認識が拡大した。この本は、米国の有力企業が進めている評判を高める施策について紹介したもの。具体的な事例が数多くて読みやすいが、日本で生活している我々は、米国企業の評判を日常肌で感じていないので、その変化が十分に実感できず隔靴掻痒の感もある。 | |
コーポレート・レピュテーション C.J.フォンブラン 他著 東洋経済新報社2005年には企業のレピュテーションに関する本が日本で4冊刊行されたそうである。これもその1冊。企業の評判に関して一通りの理解が得られるが、この本の主目的はレピュテーション指数(RQ)という評価・定量化手法を紹介することにある。となれば、その評価をどこかに依頼しなければならない。ではそれを承りましょうというのが電通である。この本は電通社員の手によって翻訳されている。だからといって、この本の価値が低いということではないが。 | |
コーポレート・レピュテーション 櫻井通晴著 中央経済社 著者の櫻井教授の略歴を拝見すると会計学の大家であるらしい。日本人が書いた本だけに、レピュテーションについてわかりやすく解説されている。とくに前半がよい。ところが後半になると、一転してバランスト・スコアカード(BSC)の話になる。会計学者の地がここに現れる。読んで損はないが、コーポレート・レピュテーションについて学ぶためなら、前半部分だけで十分な気もする。 | |
企業広報講座 全5巻 (財)経済広報センター監修 日本経済新聞社 経済広報センターが中心となってまとめた企業広報の集大成。Ⅰ経営と広報、Ⅱ企業イメージと広報、Ⅲマスコミと広報、Ⅳ企業文化と広報、Ⅴ危機管理と広報の5巻構成。後にも先にも日本にこれだけの規模の広報に関する出版物は他にない。それだけに広報のほぼ全てが豊富な事例とともに網羅されているが、大部だけに読み通すのは容易ではない。かといって事典的な使い方をするには内容が少し散漫。当代の広報理論家総動員の力作ではあるが、彼ら自身のマスターベーションと言えなくもない。 | |
現代の広報 藤江俊彦著 電通「戦略と実際」と副題がついているが、広報の実際の手引きと言うより、広報の業務を網羅して記述した本という性格が強い。各種の文献や事例からいいとこ取りをしたような印象で、広報業務の現場とは多少距離感がある。しかし、うまくまとめられている点ではいま手に入る広報関連の出版物の中では一番だろう。事典的に使えるので一冊持っていると役に立つこともある。電通版は絶版。現在は同友館刊。装幀も左の写真とは異なる。 | |
企業の発展と広報戦略 経済広報センター監修 猪狩誠也編 日経BP 日本における広報活動の発展史。この本がまとめられた1998年という時点は、戦後からスタートした日本の広報の歩みを発掘し、記録するためのデッドラインであったと思われる。今日の実務に役立つ本ではないが、将来、日本の広報学の発展に伴って価値を増して行く一冊だろう。 | |
デジタル時代の広報戦略 林利隆・亀井昭宏編 早稲田大学出版部 魅力的なタイトルだが、内容は大学の先生たちの小論文の集成。著者の先生方には申し訳ないが、私は途中で読み進む気力が萎えた。学会関係者の皆様には必要なのだろうし、存在価値がある本なのだろうが、広報の実務をしている人間にはあまり用がなさそうだ。 |